1月30日。
出発の朝、軽い頭痛がした。二日酔いだ。
僕は普段はあまりお酒を飲まないのだけれど、旅の前日はなぜか飲み過ぎてしまう。
それは気持ちが高揚しているためなのか、日本に悔いを残さないためなのか(笑)、はっきりした理由はよくわかっていない。
今度の旅も万事上手くいきますように。
国際線でまずソウルへ。それから乗り継ぎでロサンゼルスへ向かった。そこからさらに乗り継いでコスタリカのサンホセへと向かう。
約23時間の移動だ。
飛行機の中では映画を観たり、小説を読んだり(旅行中はノンフィクションよりも小説か旅行記を読むのが好きなのだ)、考え事をしてみたり、それに飽きるとうたた寝したりして、無感覚に時間を過ごした。
コスタリカの首都サンホセに着いたのは同日の夜7時ごろ。
初日は和臣の実家で一泊することになっていた。
夜少し遅くなってしまったけれど、和子さん(和臣のお母さん)が、自家製のピザと自家製ビールを夕食に用意してくれていた。
(*この家では野菜から味噌からお酒から着物まで、何から何まで自分達で作っている。帰り際には自家製ふんどしをもらった。)
そして、ここで食べるご飯がつい食べ過ぎてしまうくらいに本当に美味しい。
これの為だけでもコスタリカに来る価値があるとさえ思う。
翌朝、これも毎年恒例なのだけれど、和子さんの野菜畑の様子を見に行った。
5年前に初めて訪れた時から、育てている無農薬野菜と果物の種類もどんどん増えて、畑の敷地面積もいつの間にか倍以上になっている。
和子さんは農作業が楽しくて楽しくて仕方がないそうだ。
畑の説明をしている時、彼女の表情はとても生き生きしている。
たしかにこの野菜畑にくると、農業とはクリエイティブなんだなと思わされるし、いつも気持ちが安らぐ。
昼前にまず「ロジスティックサポート」という、輸出業者の事務所を訪問した。
ロブレスさんのコーヒー豆はこの会社がコンテナに入れて日本に送
自分達が扱うコーヒーがどのような経路で来るのかをもっと知りたくて、一度来てみたかったのだ。
担当のエリックは僕と同い年で誕生日も3日違いだったことが判明。人あたりが良く、柔らかい笑顔が印象的な青年だった。
たくさん話が出来て良かった。
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左から和臣、和子さん、エリック、僕。 |
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知人のオーガニックレストランで昼ご飯 |
午後からは車を2時間ほど走らせて、コーヒー産地であるタラス地区へ。
和臣と政治や世界情勢などについて熱く議論しているうちに到着。
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やっぱり、コーヒーが育つ所の自然環境が好きだ、と思う。
なだらかな曲線を描く地形。
青く澄んだ空の色。
遠くに野鳥の声が聞こえ、乾いた心地の良い風がこの身体を通り抜けていく。
すべてが調和しているこの感じ。
もう夕方近くになっていたので、仕事を終えたロブレス一家と食事をしながら談笑。
話の中で印象に残ったのは、世界的な気候変動がコーヒー生産にかなり影響を及ぼしているという話。
ここ5年間はそれまでの平均気温よりずっと高い年が続いていて、シェードツリーがないと強い直射日光により木が焼けてしまい、そのせいで収穫量が落ちることもあるとか。
それに適応させていくため、ロブレスさんたちは今年から、生産力と味の良さの両方を兼ね備えた品種を開発し、植え始めている。
毎日自然を相手に仕事をしている彼らの実感なので、突き刺さる説得力があった。
翌朝。
ホテルの外に見える景色に惚れ惚れしながら朝食をとる。
この日はロブレスさんの友人であるウーゴさんの農園を見に行くこ
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ホテルにて。ここで和臣と早朝から筋トレ(笑) |
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山に囲まれた街を車で通り抜ける。 |
ウーゴさんとは去年、ロブレスさんのベネフィシオ(精製所)で一度会ったことがあった。
和臣の話によれば、彼はコーヒー愛が半端な沙汰でなく、相当の研究熱心な人のようだ。
農園を見せてもらいに行く。
コーヒーの他にもアボカド、りんご、プラム、桃など様々なフルーツを生産していて生活の糧にしているそう。
急斜面が凄くて、木を見て回るのに、ウーゴさんのあとを着いていくのも大変だった。
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ピッカーの人たち。一番右がウーゴさん。 |
フルハニー(こっちでは、皮だけ剥いたミューシレージがほぼ残った状態にするプロセスをこう呼んでいる。) を何袋か、彼から購入しようと決めた。
午後はもう一度ロブレスさんのところへ戻り、一緒に昼食。
家庭の味というのはどこの国でも美味しい。
量も「無限にあるのでは」と思ってしまうほど多く、ついつい毎回食べすぎてしまう。
量も「
食事を終えて昨日焙煎していた豆のカッピング。
まだフレッシュ過ぎる感はあったけど、まぁ素材の良さは分かる。
うん。いいね、今年も。
という事で、去年と同じようにダブルウォッシュト、
あとサンプルがまだなかったけど、ゲイシャのナチュラルと、
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なんかデンマークのロースターの人が来てたので一緒にカッピング。 |
「アナエロビック」というのは、嫌気性発酵プロセスの事。
密閉させた容器の中にミューシレージの付いた状態のパーチメントに別ロットのミューシレージを加え、酸素を取り出した状態で発酵を促す。ミューシレージの酵素反応で発生する炭酸ガスの圧力によって、ミューシレージの成分をより強力に浸透させることができる。
お好みでオレンジの葉やミントの葉なども一緒に加えて待つ。
それからアフリカンベッドに移し日陰のもとでスロードライして出来上がり。
常に新しいことに果敢に挑戦しているロブレスファミリーに脱帽。
農園主のレオさんの弟であるエイリンさんはコスタリカコーヒー協会の主催するセミナーに足しげく通っていて、先日、新しい品種の開発に貢献したということで賞状をもらったらしい。
(「賞状見るか?」と、部屋からわざわざ持って来て見せてくれた。僕はずっと別のことを考えていた)
(「賞状見るか?」と、
カッピングの準備の時もずっと手伝ってくれていたルイスくん11才。
お母さんがピッカーとしてこの農園で働いているので、彼も働き手としてここに来ている。
「お父さんは?」と聞くと「ずっと前に家を出て行った」と淡々とした口調で答えた。
でも、いつでも僕らが行くところについて回って、手伝いたそうにしているのが、可愛かった。
***
何度かコスタリカに来るようになって気づいたことだが、素晴らしい農園主でも、海外にクライアントを持てる機会がなかなか持てないことがわかってきた。
ほとんどの農園は農協のようなところと契約しているのが実情だ。
農協は彼らの代わりに買い手を見つけてくれ、彼らの作ったコーヒーを全て買い取ってくれるからだ。
もちろん、それだけで生産者は全てのリスクを取り除けるわけではなく、例えば供給量が多い年は安い値段で買い取られることもあるし、不作の年に何か補償をしてもらえるわけでもない。
より良い品質を作ろうと、設備費用をコーポレーションから借入していても、安定しない収穫量のせいで思ったように返済できず困窮している生産者も多い。
僕の個人的な希望としては、ロブレスさんともこれからも継続的な取引をしていきつつ、「美味しいコーヒーを作ろうとしている人達」に、少しばかり僕たちも協力できたらいいな、と思っている。
「あなたからもコーヒーを買いたい」と伝えた時の、ウーゴさんの嬉しそうな表情が今も目に浮かぶ。
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色々説明中のレオさん。 |
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いい色。 |
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渋いレオさん。 |
次回はエルサルバドル編です。
*今年買い付けた豆は8月頃に入荷予定です。
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