コーヒー豆の買付けの仕事はとりあえず無事に終了。
「海へ行こうよ!」と和臣が誘うので、コスタリカ滞在最終日はのんびり過ごすことにした。
タラスを出て、車で1時間。
海に近づくにつれ、だんだんと日差しも強くなってくる。30℃はあるだろうか。
そうか、今まで標高の高いところにいたから、ちょうどいい気温だっただけで、本来は赤道に近い国だもんな。そりゃ暑いはずだ。
お店に寄ってサングラスを購入した。ぼくというやつはこういうものをすぐに失くすってのは知っているけど。
それからしばらく車を走らせていると、大きな橋の真ん中あたりに人だかりができていた。
運転手の和臣に「あれは何?」と聞くと、
にやっと笑って、「野生のワニがいるんだよ」と教えてくれた。
それは見ておかねば。車から降りて、見物。
いいね、コスタリカ。さすが「動植物の宝庫」と言われているだけある。
「世界一美しい鳥」と呼ばれるケツァルも、一度は見てみたいなぁ。
再び車を走らせていると今度は舗装されていない道に入った。
アップダウンで車が縦に揺れる。砂埃が激しく舞い上がる。
この道路を越えたところにビーチがあるらしく、今夜はそのすぐそばにあるホテルに泊まることになっていた。
ホテルには、ぼくたち以外にほとんど人がいなかった。
聞くところによると、この場所は未舗装の道路が続くのを嫌って、観光客があまり来ないのだそうだ。
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宿泊したホテル |
ハンモックがあり、ヤシの木があり、プールがあり、果てしなく続く砂浜があり、ついでに親しみやすそうなイグアナたちがあちらこちらにいる。
チェックインを済まして、真っ直ぐに僕はプールに飛びこんだ。
ひんやりして気持ちがいい。久しぶりに水泳してみる。
体を冷やした後は、ビール片手にハンモックに包まれ読書にふける。
楽園だ、と僕は思う。
しばらくいると駄目になる自信がある。
明日にはコスタリカを発つことを想い、ぼくは安心した。
昼過ぎにランチをとった後、ホテルのオーナーさんが持っているボートでマングローブの川を周遊することになった。
(昔はよくこういうのやったなぁ。
アマゾン川でピラニア釣ったり、アナコンダ探しに行ったりしてたな。懐かしい。)
川を進み入るうちに、ホテルのオーナーさんは相当テンションが上がって来た。
「見て、あれ!ビューティフル。あっ!あの鳥見て!サギだよ。あっ!静かに。猿がいる!」
色々とガイドしてくれるのは有り難いが、ボートのエンジンでほとんど聞こえん。
途中から、オーナーさんの話をほどよくスルーしながら、バードウォッチングを愉しんだ。
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オーナーさん。何回もやってるくせに一番テンションが高かった |
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猿。なんか威嚇してきた |
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和臣がなんか釣った |
陽が傾いてくると海へ出かけた。
左を見ても、右を見ても、どこまでも海岸線が続いている。その先には蜃気楼しか見えない。
ぼくたちのほかに誰も見当たらない。なかなかの穴場だ。
ぼくたちは夏休み気分で波と戯れたり、砂浜沿いを歩いたりして時間を過ごした。
日没。
海の向こうに、炎よりも赤い色した太陽が、スローモーションで沈んでゆく。
そのとき、何人かの人たちが砂浜に集まって来た。
ほかにも人がいたんだ・・・。
どの国にいても、夕陽が沈む時間になるといつも砂浜に人が集まってきていたっけ。
それまで大騒ぎしていた人たちも静まり返って、ただただこの光景に見とれていた。
みんな好きなんだなぁ。
一日の終わりを告げるこの瞬間が。
太陽が沈みきってしまうと、空はゆっくりと菫色へと移り変わり、金星が姿を現した。
ずっと待ち構えていたみたいに。
そしてそれが合図だと言わんばかりに、ぽつ、ぽつと次々と星達が煌めき始めた。
気がつけば、夜だ。
まさにMagic hour・・・。
この、地球の毎日の営みを僕は普段、見落としすぎているような気がするな。
夜が訪れてからも、煌々と照る月の下で、僕たちは海の暖かさを感じながら、いつまでも身を泳がせていた。
***
翌日の早朝、和臣たちに車で空港まで送ってもらった。
「また来年」と言い合い、ハグをして別れる。
和臣のお母さんの和子さんが、僕たちの為に作ったサンドイッチを持たせてくれた。
今回は本当にお世話になりました。ありがとう。
これからもよろしく。
***
帰りの便はアメリカ・ロサンゼルスで乗り継ぐことになっている。
そこから東京行きの便は翌日発だったのでかなり時間がある。
せっかくなのでロサンゼルス市内へ繰り出すことにした。
ロサンゼルスは初めてだ。中央駅から歩いて探索をはじめたが、思ってた以上に広い。
それに飛行機で荷物を預けることができず、全荷物を抱えての町歩きになってしまった。タクシーを捕まえようにも、全然タクシーを見かけない。
時間がかかりすぎて、行きたかったお店が閉店していた時は自分の無計画さを呪った。
まぁ、この辺はずっと成長しないな、ぼくは。
途中で、何故かアパレルショップに入り、パンツを衝動買いしてしまった。
良い感じのお店だった。アパレルだけど、スペシャルティコーヒーを普通にサーブしていて。何かと勉強になりますね。
コーヒー屋は「Black Top Coffee」、「Stump Town Coffee Roasters」、「Intelligentsia」へ立ち寄った。
あ、あと「Blue Bottle Coffee」もあったのだけれど、時間もあまりなかったのでスルー。
アメリカのBlue Bottle Coffeeを初めて見た友人S君は、「コスタリカが濃すぎたせいか、なんか、感動が薄いすね」などと結構勝手なことを言っていた。
暗くなって来たので、空港へ戻る。
さあ、あとは日本に帰るだけだ。
しかし、そこからが長かった。
夜の9時に空港に戻り、翌朝の10時の飛行機を荷物受け取り所のベンチで待たなければならない。やたら寒くて眠れなかった。
10時にやっと日本行きの飛行機に乗る。
10時間かけて東京に着き、それからまた福岡行きの飛行機に乗り継ぎ。
そして2時間後、ようやくわがホームタウン、福岡に着いた。
久しぶりの長旅だったけれど、不思議と疲労感はあまりなかった。
むしろ、何かエネルギーをもらってきたような感じだ。
やっぱり僕は移動することや新しいものに出会うことで、活力を得ていくタイプの人間のようだ。
こんな風に、海外に出張できるのも、色々な人の支えがあってこそです。
ありがとうございました。
***
今回買った豆は、収穫、生産処理を経て1ヶ月間、冷暗所で保管されます。
そして3月の終わり頃に出荷され、船便で輸送される予定です。
それからおよそ3ヶ月後、つまり7月頃に日本に届くということですね。
うまくいけば。
すべてうまく行きますように。
おしまい
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