2023年5月4日木曜日

BASKING COFFEEの店舗展開について

BASKING COFFEEは現在、千早店、広島宇品店、春日原店の3店舗を構えています。


そのうちのいくつかの店舗に行かれた方は、同じBASKING COFFEEでもそれぞれの店舗に違った個性や雰囲気を感じられたかも知れません。


各店舗によって内装、ブレンドの種類、パッケージデザイン、ドリンクメニューは、実際それぞれ違っていて、チェーン店のような統一感はあまりないと思います。


このやり方は、生産性を最大化するという意味ではあまりいい方法ではないように思えますよね。ブランディングや規模の経済によって得られるはずのメリットをかなり失うことになるので。


では、なぜこのようなやり方で店舗展開を行うのか?


まず第一に、「BASKING COFFEEで働く人たちが仕事を楽しめ、能力を発揮できる環境を作りたい」というのがあります。


トップダウンで指示が与えられ、マニュアル通りに作業をこなすようになってしまったら、その人の本来持っている能力も限られてしまいます。


自分で考え、創意工夫する余地がある。

自分のアイデアや意見が(チームメンバーが納得できれば)お店に取り入れられるという感覚がある。

その方が、お客様から喜ばれた時嬉しいし、自分の仕事に誇りを持てる。

という風に考えるからです。


もちろん、これは自分で考えたくない人にとってはつらい環境かもしれません。「常に自分で考えて行動する」というのは、ある種の人には酷な事でもあるので


第二に、コーヒー屋をやる上で、そもそも僕はファストフード店やコンビニのような画一的コピペ店舗展開などをやることに価値を見出していません。


それよりも、各地域で、それの対極のものを創っていきたい。具体的には、

「お客さんや自分たちがわくわくできる、独創的でおもしろいお店」を創りたい。

(もちろんコーヒーの味を追求していくことは大前提です。)


そのためには、やはりこれも「自分たちで考えて改善していける人たちの集まり=自立分散型」の経営体制を築くことが大事だと考えています。


だからと言ってもちろん全てを受容するわけではありません。

過度な自由は時に無秩序を引き起こす原因になりえます。よかれと思ってやったことが、誰かを悲しませる結果になることは往々にしてある。


どこに境界線があるのか。

それをチーム全員が理解しておくために、BASKING COFFEEには以前書いた通り「理念」や目指す場所つまり「ゴール」を明文化し共有しています。

BASKING COFFEEの理念、哲学



そこの軸がブレなければ、トップダウンで人々を「管理」しなくても、各人や各店舗は楽しみながら自律的に改善し続けるはずで、それでいてなお「BASKINGらしさ」が核として残るということが可能だと信じています。


樹木で喩えるなら、根っこ(理念)と幹(人間性)の部分がしっかりしていれば、枝葉(個々が自由に振る舞うこと)の部分は、多彩であった方が美しい。ということです。


今後、お店が増えることがあって「BASKINGらしさ」と「そのお店・人の個性」のバランスを取ることを大切に、経営していきたいと思っています。



過去のBASKINGの哲学シリーズ

BASKINGが大切にしている3つのこと

店主の仕事観






















 

 

 

2023年4月16日日曜日

コーヒーの旅【ボストン-コスタリカ編】

〜こちらの旅日記は店主エノハラがBASKING COFFEEを開業する前に産地を旅した2013年の頃のお話です〜 

しばらく更新してませんでしたが、コーヒーの旅、続編です。 

前回までのあらすじ 



***

グァテマラを発ち、僕はボストンへ向かった。そこで行われる世界最大のスペシャルティコーヒーの祭典「SCAA」に参加するためだった。


ちょうど到着した翌日、世界的ニュースにもなったボストン・マラソン爆破テロ事件が起こり、街は少しピリピリとした雰囲気が漂っていた。 ボストンの滞在前半は、街のコーヒーショップを巡った。
有名な「George Howel Coffee」で飲んだエチオピアのコーヒーが凄まじく美味しく、冷えた身体に染み渡ったのを今も覚えている。

滞在後半はSCAA会場へ通った。 
日本でも毎年ビッグサイトでSCAJが開催されているが、それと比較しても規模が桁違いに大きく、何度も迷子になった。大人なのに。 
SCAA内で見たものは、数年後になってようやく日本でお披露目されるような最先端のコーヒー抽出器具、マシンで、すべてが新鮮で僕は興奮しっぱなしだった。

この時点で、ボストンの後コスタリカへ行くことが決まっていた僕であったが、実は農園のつてが全くなかった。 
僕は「今しかない」と思い、SCAA内のコスタリカのブースへ行き、(SCAAでは世界中から生産国の農園主や輸出業者が集まる)そこらにいた農園主に「あの、来週コスタリカ行くのだけれど、あなたの農園を見に行ってもいいか?」と直談判した。
すると快く「ぜひ来てくれ!」と返事を頂き、名刺交換に成功。 
とりあえずこれで行くあてができた・・・ 何だろう、僕はある種、図々しくいられるところが、強みなのかも知れない。


そして、ついに僕の将来のメインの買付け先となるコスタリカへ!  

コスタリカに着くと、まずは首都サンホセに滞在することにした。
宿は決めていなかったので、ひたすら歩き回っていると、「Van Gogh」というゲストハウスを発見。名前が良い。しばらくはここで寝泊まりすることにした。

「Van Gogh」では2人組のスウェーデン人の若者と仲良くなった。マークとフィリップ。
最初ゲイカップルかな、と思っていたが、違うことが後でわかった。
ある時、「Van Gogh」近くでファーマーズマーケットが開催されているとの情報を得、3人で遊び行くことにした。  
オーガニックの野菜や、チョコレート、蜂蜜など、美味しそうなものや面白そうなもので賑わっていた。音楽隊もいる。 

出店している人たちの中に、ひときわ目立っている人がいた。それは60歳くらいの日本人のおばちゃんだった。 
そう、それがあの「和子」との出会いだったのです(誰やねん)。 
コスタリカで、しかも観光地ではなく、地元民が買い物に来るようなところで日本人に出会うことはかなり珍しかったらしく、和子は激しく興奮していた。
つばを飛ばしながら大きな声でしゃべり続ける和子に、マークとフィリップはびっくりしていた。怯えているようにも見えた。

彼女はこのマーケットで、自分の畑で育てた野菜からぬか漬けや味噌を作り、発酵食品の店として出店しているとのことだった。 
コスタリカはオーガニック食品に対する意識が高い人が多いらしい。 
和子は自分のつばを拭いながら僕にこう言った。
「あんたさぁ、この旅でろくなもん食べてないんでしょう。私たちの家に来なさいよ。美味しい日本のご飯たべさせてあげるから」 
僕は即答した。
「あ、行きます」 
そして僕はスウェーデン人の2人と別れを告げ、ホステルをチェックアウトし、和子の家へ向かった。(スウェーデン人のフィリップは後にまた登場します)   
つづく