2017年2月17日金曜日

コスタリカ・買付け出張(前編)



コスタリカの首都サンホセには福岡からおよそ16時間。調子に乗ってビールを飲み過ぎて気持ち悪くなったりしながら、ようやく到着。

3年ぶりだ。

以前知り合った日本人の家族が空港まで迎えにきてくれ、彼らの自宅があるコロナダという町へと向かう。

車の窓から外の景色を眺めていると、懐かしい想いがこみ上げると同時に、前回とは少し違う心持ちでいる自分に気づく。

コーヒー豆を買いに来た。

やっと来れた。

果たして本当に買えるのか。

買えなかったりして。

少しばかりの不安がある。しかしその不安を圧倒的に凌駕するほどのわくわく感が胸の真ん中にあり、その混じり合った感覚が心地よい。
初めて海外を一人旅したときと同じ感覚。

さあ、明日には農園だ。
美味しい食事をごちそうになり、明日からの日々のために早々と眠りにつく。





***

農園があるタラスという地区までは、コロナドから車で2時間ほど。運転手は和臣がしてくれる。
和臣は今回お世話になっている日本人家族の長男だ。運転手だけでなく、通訳や交渉など大いに協力してくれた。ちょっとマルコムXに似ているハンサムガイだ。

農園に近づくにつれて、景色は美しいランドスケープへと移り変わる。
コスタリカは「中米のスイス」とも言われているらしく、緑豊かで牧歌的な風景は確かにスイスの田舎に似ている気がする。

タラス地区に入り、やがて車道の両側にコーヒーの木が見えはじめた。
この辺りまでくると、見渡す限りコーヒー園が広がっていて、「コーヒーの産地に来たなぁ」という実感が湧いてくる。

事前に連絡しておいたコーヒー生産者であるロブレスさんと、小さな町の教会の前で落ち合った。

「Mucho gusto(はじめまして)」

握手するのと同時にロブレスさんは早口のスペイン語でまくしたてる。
ここは和臣に通訳してもらう。どうやらすごく歓迎してくれているらしい。
しばらくの立ち話のあと、ロブレスさんの農園へ向かった。

ロブレスさんはベネフィシオ(生産処理所)も所有している。

ここで摘み取ったコーヒーチェリーの皮や果肉を機会で剥いで、発酵させる。
ベネフィシオ特有の、リンゴ酢のような匂いがあたりに漂っていて、それが3年前農園を回っていたときの記憶を蘇らせる。

ベネフィシオの向こうにパティオが見えた。
(*パティオというのは、コーヒーチェリーを天日干しするところ。野球場のグラウンドをならすトンボのようなもので、一日に何度か撹拌し、過発酵を防ぐ)

そしてさらにその向こう側には、なだらかな山々が見渡す限り続いている。

なんて美しい景色だろう!

多様な緑色。澄んだ空気。乾いた風。真っ青な空。静けさ。

いつも思う。コーヒー農園のある自然環境は、人間にとっても心地いい。
ここにいると僕は気持ちが本当に安らぐ。

ロブレスさんのトラックの荷台に飛び乗り、さらに山の高い方へと進んで行く。

でこぼこ道がしばらく続いたあと、標高1800mあたりのところでトラックを降り、歩きながらコーヒーの木の様子を近くで見てみる。

赤い実がたわわになっている。ちょうど今日から、この辺りの実を摘む予定らしい。

「摘んでみますか?」
とロブレスさんにバスケットを渡され、試しに実を摘んでみる。

が、バスケットの底が埋まる前に早々ギブアップ。
さりげなくロブレスさんの息子ホセにバスケットを渡す。
未熟豆が混じっているのをロブレスさんに見られ、冗談まじりに怒られてしまった。

ここで働くピッカー達は一日にこのバスケットを10個は一杯にするらしい。
かつ、優秀なピッカーは、赤い実だけを確実に摘むという。
すごい。

急な斜面のプランテーション。こんな所の実を一体どうやって摘むのだろうかと思う

同じ農園でも、これだけ標高差があると、ロットによって味も大きく変わる。

一般的には、標高が高いところで育つコーヒー豆の方が、美味しいコーヒーになりやすいと言われている。
寒暖差のためにコーヒーの種子である生豆が硬く締まり、味が凝縮されるからだ。

山道を歩きながら、コーヒーチェリーを眺めたり、生産者の話を聞いたりした。
あっという間に過ぎる楽しいひと時。

昼過ぎに、ロブレスさんの自宅でランチをごちそうになる。

この家には、ロブレスさん、ロブレスさんのご両親、お兄さん、弟さん、ロブレスさんの息子ホセが共に暮らしている。大変賑やかである。
コスタリカの家庭料理、SOPA・NEGRA(ブラックビーンのスープ)を食べながら、色々な話をした。

「私たちは、今まで大きな企業と取引していたこともあったのですが、これからは規模が小さくても、共に品質を追求していけるようなインポーターやロースターとの取引に力を入れたいと思っています。品種のことや、生産処理に関することは顧客の要望に柔軟に応えていくつもりなので、もし何かあればいつでもおっしゃってください。」

とにかくアツい人たちで、このとき1時間以上は話をしたけれど、一番ぐっときたのがロブレスさんがしてくれたこの話。

透明性やトレサビリティ、持続可能性。

このあたりのことはもちろん大事なことだけれど、僕の感覚としては、お互いが納得のいく形で、一緒に成長していける関係性を作っていくことが何よりも大事。
その為には、毎年来よう。毎年買って、毎年顔を合わせて話をしよう。

そうして、本音で話せる関係性を作っていくことができれば、これからもっとコーヒーも美味しくなっていくはず。

午後のカッピングのために、ロブレスさんの所有するラボへと移動する車の中で、そんな風なことを考えていた。


後半に続く。




ロブレスさん。実の摘み取り方を教えてくれている
        

品種によっては黄色い実もある。熟度を見分けやすいのは赤い実の方





弾力のある実。皮を剥ぐと種が2つあり、それが生豆になる


      
      


       
        



和臣と


ロブレスさん兄弟。右がお兄さん。全く似ていない



        
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