この日は(ついに)「Los Robles」のあるタラス地区へ向かう。
Kazukoさんの家があるコロナダから、車で3時間ほど。
そこまでの道程もずいぶん見慣れてきた。
タラス近くにあるガソリンスタンドで給油し、隣のサービスエリアで昼ご飯を食べる、というのも去年と同じだ。
ここでお土産を買った。
おもしろいのは、こういったサービスエリアのような所のコーヒーもなかなか美味しいことだ。
コスタリカの政府は、コーヒーのアラビカ種以外の栽培を禁止していて、低品質のコーヒーを作らないように国全体での取組みが行われている。
高品質なコーヒーが、それこそ「当たり前」にあるのだ。
立ち寄ったスーパーマーケットでも、【イエローハニープロセス、◯◯農園】と明記されたコーヒーが販売されていて、興味深かった。
日本で言う、「野菜の産地直送」みたいなものかな。
途中から未舗装の道路になり、がたがた車を走らせながらようやくロブレスさんの農園にたどり着く。
相変わらず、天候が素晴らしいところだ。
からっとした風が身体を通り抜けて行く。思い切り息を吸い込みたくなる。
ロブレスさんたちが出迎えてくれた。1年ぶりの再会。
仕事中のようだったが、みんな嬉しそうな顔をして集まって来てくれる。
“農家の顔つき”ってあるよなぁ、と思う。
まなざしが真っ直ぐで、よく笑う。
早速、今年のでき具合を聞いてみた。
今年は嵐が来て、国中大変だったらしい。
土砂崩れも各地で起こっていて、コーヒー農家のダメージも大きいようだ。
前回、僕が買い付けたエリアも嵐にやられていて、収穫量がほぼゼロに近いということだった。
やっぱり農業っていうのは厳しい。
ロブレスさん一家は、1エリアの農園の収穫量が落ちたり、売れ残ってしまった場合にも相互に協力して買い手を見つけたりしているので、リスクを最低限に抑えているのでまだいい方なのかも知れない。
まず、ベネフィシオ(生産処理所)を見学させてもらったあと、ロブレスさんたちの農園へ行く。
今回初めて会った、クリスティアーノさん。
ロブレスさん達の親戚で、共に働く仲間。農園内を案内してくれた。
たくさんのピッカー達も紹介してくれた。
ピッカー達の熟達したピッキング技術に驚く。
クリスティアーノさんは、コーヒー農園だけでなくニワトリを飼育していて、卵や鶏肉を売って儲けてやると意気込んでいた。ロブレスさんとは違うビジネスマンタイプのようだ。
クリスティアーノさんに小一時間ほど農園の中を案内してもらったあと、再びロブレスさんのベネフィシオへ。
ロブレスさん宅でお昼ご飯をごちそうになりながら、Kazuomiを介して色々な話ができた。
農園での新しい取り組み。
これからの日本のマーケットについて。
その中で、生産者の生豆の取引の難しさについてロブレスさんたちが語っていたのが印象に残った。
「去年は本当に大変だった。ずっと取引をしていた輸出業者が、何年間も全くお金を払ってくれず、銀行からの借入れもできなくなってきた。今年作る為に必要な肥料すらも買えないかもしれないところだった」
そして、
「そんな時に君が突然現れて、俺たちのコーヒーを買ってくれた。そしてお金をきちんと払ってくれたから、今年も何とか乗り切ることができたよ。ありがとう。」
と。
顔をくしゃくしゃにして笑いながらそう言ってくれるので、僕は思わず泣きそうになってしまった。
いちバイヤーとしてまだまだ買付けの量も少ない僕たちだし、正直に言えば「生産者を救おう!」などと言った高尚な気持ちでこのビジネスをやっているわけじゃない。
でも少しでも彼らの役に立っていたのだなと思うと、これまで以上に気合いが入った。
夜、Kazuomiと僕は泊まっているタラスのキャビンへ戻った。
キャビンには冷蔵庫やキッチンが備え付けてあるので、Kazukoさんが仕込んでくれたご飯を温めるだけで良かった。
仕事を終えたあとの至福のビールを味わいながら、Kazuomiと夜中まで語った。
Kazuomiはコスタリカと日本のハーフで、日本に来たことはまだ一度もない。
でも、僕はいつも彼の中に、「日本的なもの」を感じずにいられない。
Kazukoさんの影響なのだろうけれど、美空ひばりや坂本九、小津安二郎などが大好きで、彼らがいかに素晴らしいかをいつも楽しそうに僕に教えてくれる。
「日本」という国が持つ魅力を、日本の裏側あたりで、英語とスペイン語と日本語を交えた言葉で聞かせてもらえるのも、なかなか味わえない贅沢だ。
続く
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